5/22(日)に開催した、課題本読書会の終了レポートです。遅くなり大変申し訳ございません。
課題本:『なにかが首のまわりに』
チママンダ・ンゴズィ アディーチェ (著)、くぼた のぞみ (翻訳)
開催日:2022年5月22日(日) 9:30-11:30
場所:池袋駅周辺のカフェ
参加人数:5名
私が初めて読んだアフリカ文学は、アパルトヘイト解放後のアフリカを描いた、クッツェーの『恥辱』でした。その後、チヌア・アチェベの『崩れゆく絆』を読み、すっかり魅了されてしまいました。
アフリカが舞台の小説の多くは、アパルトヘイトや独立問題、格差や貧困、女性問題などアフリカで起こっている(起こった)出来事に翻弄されつつ、強く生きる人々が描かれており、その「強さ」にとても魅力を感じます。
また、守り神や呪術師、まじないや呪いといったアニミズム的な部分も、日本人の八百万の神と通じるところがあり、とても面白いです。
今回の課題本は12篇の短編で構成されており、人気のあった上位4篇を中心に感想をシェアしました。
人気順:
①『なにかが首のまわりに』
②『ひそかな経験』
③『結婚の世話人』
④『震え』
みなさんのおススメの箇所:
『イミテーション』より、P38 P60
それから、借りていた家が売りに出たので、手ごろな値段だ、われわれが買おう、とオビオラがいった。ンケメはオビオラが「われわれ」といったのが気に入った。彼女も意見もそこに入っているように聞こえたから。
「わたしたち、学校のいまの年度が終わったらもどるつもり。もどってラゴスに住むの。わたしたち、帰国する」彼女はゆっくりしゃべる。彼を納得させるために、と同時に、自分自身をも納得させるために。
『イミテーション』より、P40
鏡の映った自分の顔をじっと見る、右目が左目よりややちいさい。人魚の目、とオビオラはいう。いちばん美しいのは天使ではなく人魚だとオビオラは思っているのだ。
『ひそかな経験』より、P71
「赤ちゃんは家にいるよ!あたしがいっているのは最初の娘のこと、ハリマだよ」女が泣き出す。静かに泣いている。肩が上下している。チカの知っている女たちがやるように、こんなことは独りでは耐えられないから抱いて慰めてちょうだいと烈しく叫ぶのではない。女が泣くのはその人だけのひそかなもので、やらねばならない儀式を、他人には関係のない儀式を執り行っているよう。
『震え』より、P201
生きるってことは槍を振りかざすサタンとたたかうことじゃなくて自分とたたかうことなんだから、信仰ってのは良心をいつも研ぎ澄ましているかどうかってことなんだから。
『震え』より、P207
「ウデンナの身の安全を守ることが神の責任であるなら、死んだ人たちにも神の責任はあるはずよね、彼らの身の安全を保つことだって神にはできたはずでしょ。ある人よりもほかの人を神はひいきするってこと?」ときいた。「神のやり方はわれわれのやり方ちはちがう」チネドゥがスニーカーを脱いで本棚のそばに置いた。
「そんなの道理に合わないよ」
「神はいつだって道理にかなっているけれど、かならずしも人間の道理に合うとはかぎならい」と本棚の写真を見ながらチネドゥが言った。
以上です。
久しぶりの課題本読書会、とても楽しかったです。次回は韓国の小説を課題本にしたいと思います。
ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。
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