1/28(土)に開催した、課題本型読書会の終了レポートです。
課題本:『ここから世界が始まる』
トルーマン・カポーティ 著
開催日:2023年1月28日(土)
時間:9:30~11:30
開催場所:池袋駅周辺のカフェ
人数:6名
2023年最初の課題本なので、「初」「最初」「開始」などの文言がタイトルに入っている本がいいなと新宿紀伊国屋に行ってみつけたのが、今回の課題本「ここから世界がはじまる」でした。
海外文庫本コーナーの平積みされており、見た瞬間にこれだ!思いました。
この作品は、カポーティの初期の作品で、執筆時にはプロの編集者がいなかったそうで、未編集に近いため、訳者あとがきに「ほとんど生の文章を訳すことは、小悦の翻訳家にとっては、めずらしい経験」とありました。タイトル通り、カポーティにとってもここからはじまったようですね。
どの作品もかなり短く(一番短い作品で8ページ)で突然はじまり、いつのまにか終わってるという感じで、まるで長編小説の抜粋のような、ストーリーの山場だけ最初に思いついてそこから書いたような、そんな話が多かったです。まさに習作ですね。
14編のうち人気があった順番:
・これはジェイミーに 5票
・西行車線 4票
・似た者同士 4票
・ここから世界がはじまる 4票
・ミス・ベルランキン 2票
・沼地の恐怖 2票
・知っていて知らない人 1票
・ルイーズ 1票
・分かれる道 1票
上記5作の感想:
「これはジェイミーに」
・一番ストーリーがわかりやすい
・他の作品は起承転結のなかの「結」のみ、もしくは「転結」ばかりのなかで、いちばん起承転結がはっきりしていた
・ラーメン屋にいってやっとラーメンが出てきた感じ
・他の作品のは暗いが、唯一明るい作品
・ラストの「太陽にきらめく貯水池」が明るい未来を暗示してそうでよかった
「西行車線」
・海外ミステリーみたい
・ストーリーとしては一番おもしろい
・映画「マグノリア」、エド・マクベインの小説を思い出した
・人生の転機を迎えた人々が、みな同じ太陽を見て、そして同じバスに乗り込む
短いが構成がよく、顛末がはっきりしている
「似た者同士」
・マダム2人の会話のやりとりが面白い
・マダム2人の関係性が気になる
・リッテンハウス夫人は夫を殺した?
・火葬にした灰を靴の箱に詰めてエジプトに送ったくだりがブラックユーモアぽくて面白い
「ここから世界がはじまる」
・村上春樹の解説にもあるが、主人公のサリー・ラムは少年時代のカポーティのそのもの
、想像力がたくましい
・クリエイターは妄想癖を持っている
・学生時代の授業中を思い出した
気に入った箇所:
・このあたりには人っ子一人いない。ほかの農家といえば四マイルも先である。一方に畑地、もう一方には沼地と森。このように生まれついたのだと思うことがあった。生まれつき見えない、聞こえない、という人がいるように、彼女はように生まれたのだ。(火中の蛾より)
・「人はみな、それぞれの道で天国に達するものなれば」(西行車線より)
・「では、ここからバスに乗って帰りましょう。」「あすの午後にでも、三人でバスに乗って町へ出ましょう!」「あすの午後、バスに乗って町に出よう。」「あしたバスに乗ります。」(西行車線より)
・「きらきら光って、金みたいだね」彼は、白い服を着て、きっちり化粧をしたミス・ジュリーに、そんなことを言うのだった。「ほんとに金ならいいんですけど」ミス・ジュリーは愚痴めかした答えを返す。(これはジェイミーにより)
・まさかカポーティの「新作」を訳す機会があるとは思わなかった
(訳者あとがき 小川高義より)
・僕には―天才でも神童でもない僕には―もちろん想像するしかないわけだが、ある場合にはそれはどこまでも美しい至福となり、またある場合にはそれは背負うべき重荷となったかもしれない。
(解説 天才作家の天才的習作 村上春樹より)
2023年最初の課題本読書会、無事終了してホッとしました。
毎月課題本を決めるのは大変ですが、できる限り続けていきたいと思います。
ご参加の皆様ありがとうございました。
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