遅くなりました。
3/30(土)に開催した、課題本型読書会の終了レポートです。
課題本:『苦役列車』 西村 賢太 作
開催日:2024年3月30(土)
時間:15:15~18:00
開催場所:珈琲西武
人数:8名
3/30(土)に、4か月振りに課題本読書会を行いました。
『苦役列車』にした理由ですが、以前から熱心なファンが多い作家さんだな思っていたのと、正月の地震で西村先生のお墓が倒れたニュースを見たこともあり、代表作である芥川賞作品を課題本にしました。
私は初読だったのですが、熱心なファンの方が数名参加され、自作のレポートをプレゼンして頂いたり、なかなか白熱した会になりました。
今回は以下の流れで会を進めました↓
■全体の感想について
■貫多について
■日雇い労働について
■芥川賞受賞について
■印象に残った箇所
■全体の感想について
・思ったほど暗くない。全体通して主人公がそんなに落ちぶれていない。
・思った以上に自分の好きな感じだった。
・そんなことまで書くのかと驚いた。
・取り繕わない。むき出しの表現、そこが面白い。
・深刻な話だけれどサラっと読めた。
・普段は自分では手に取らない作品だが、これを機に読んでみた。読んでよかった。
・人間の醜さを前面書いた。
・俯瞰して書かれていた。
・『苦役列車』は複読に次ぐ複読をしている作品。西村先生の作品は要素がパターン化しているが、『苦役列車』はおおよそ全ての要素が含まれている。露悪な部分が多い。
・西村先生はリズムをつけることで、自分しか書けないものを書いている。
・1年前に読んで、読書会のために読んで、計2回読んだ。読み手を引き付ける魅力がある。
・昭和な感じが良い。
■貫多について
・貫多の一番最悪なところは、日下部の恋人に対する評価の部分。どの立場からなのか?
かなり上から目線で謎の15点をつけている。
・おじさんに交じってカウンターで酒を飲む姿が19歳にしては老成し過ぎてている。
・憎めない奴→子供っぽいからか?幼児性がある。
・日下部という友達ができたら毎日仕事に行けるようになったところなど子供っぽい。
・幼児性=ピュアさの裏返し=露悪
・家賃を踏み倒し、親から金をむしり取るが、盗まない。
→西村先生は刑務所をひどく嫌がっていた(父親がいるからか?)そのため貫多も犯罪にまでは手を出さなかったのか。後の作品で同棲相手を怪我させた際も土下座して、訴えを取り下げさせた描写が出てくる。
・そもそも日下部とその恋人とレールが違う。もうあきらめている。もがいていない。
・苦役列車のレールとは、性犯罪の息子というレールから抜けられないことなのではないか。
・『男はつらいよ』の寅さんの悪版のようだ
・プライドが高い。勝手に相手に勝てるところを見つける。
・せっかくのスキルアップのチャンスも自ら棒に振っており、やっぱりなと思った。
底辺が身についている、ひねくれており諦めている。成長しない、したいとも思っていない。
・ローンウルフ気取り、開き直って、自分を客観的にみている。純朴であるが計段高い。
・『根は〇〇』という表現がいい。自尊心の現れ?
・ドストエフスキーを彷彿とさせる。
・P36の先生のセリフ『貫多は何も悪いことはしていない。~』は自分が先生に行って欲しかったのでは。
・仲良くなると急にくれくれとと言い、距離を詰めてきて一方的に甘えてくる。
→毎回こうして人間関係をダメにしてした、これからもするのだろう。
■日雇い労働について
・作中に『この、いろいろな意味でルーズ極まりない日雇いシステムの味を、初手にして知ってしまったことが、その後の生活態度のつまずきの元だったのである。』とある通り、計画性がなくなり、一度はまると抜けだせない働き方。
・社会保障がないなど、賢い働き方とは言えない。
■芥川賞受賞について
・作家はインテリや裕福な家の出が多い中、非インテリ(中卒)が書いた作品。非インテリしか書けなかった作品。
・男の劣等化から生まれた作品。
・人に言ったら引かれるような部分をきっちり書いている。
・開き直り方が違う。ある意味潔い。
・西村先生はインテリのことを「お利口バカ」と呼んでいた。
・主人公がまったく成長しない、珍しい作品。結構悲惨な生い立ちだが、かわいそうとなならない。
■印象に残った箇所
P116
この先の道行きを終点まで走ってゆくことを思えば、貫多はこの世がひどく味気なくって息苦しい、一個の苦役の従事にも等しく感じられてならなかった。
P9(冒頭)~15の文章のリズム
嚢時北町貫多の一日は、目が覚めるとまず廊下の突き当りにある、年百年中糞臭い共同後架へ立ってゆくことから始まるのだった。
P21
ちょうどその男はサラダの容器に分厚い唇をつけ、底に溜まっていた白い汁みたいなのをチュツと啜り込んでいるところだったので、これに彼はゲッと吐きたいような不快を感じ慌てて窓外へ視線を転じた。
P26
弁当が終わると上っぱりを脱ぎ、箱を戻しに行ったその足で、陽光の当たっている柵に
広げるようにしてかけておく。また午後の作業が始まればすぐにビチャビチャにに濡れるのだが、これは他の者に倣っての、何となくの習慣じみたものであった。汗で体に貼りついているTシャツの方は、着たままでこの昼の休憩時間中に自然乾燥するに任せる。
P66
ひと月を過ぎても、依然貫多の黽勉たる連続労働は止まらなかった。日下部にはもうすっかり無二の親友のように接し、その口調のぞんざいさも、いかにも心腹の友に対するそれらしき度合を深める一方であった。そんな或る日、
P122
確たる将来の目標もない、相も変わらずの人足であった。
会場の珈琲西武は老舗喫茶店で、豪華なパフェやクリームソーダ、ふわふわのオムレツが有名なお店なので、各自で好きなものを食べながらの読書会でした。
私は珈琲だけだったのですが、皆様から写真を頂いたので本の集合写真と一緒に掲載します。
次回の読書会は6月になります。
よろしくお願いします。
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