2/16(日)に開催した、課題本読書会の終了レポートです。
課題本:『すべての、白いものたちの』 ハン・ガン 著
開催日:2025年2月16日(日)
時間:10:30~12:30
開催場所:池袋駅周辺のカフェの個室
人数:7名
毎年ノーベル文学賞が発表される日は、新宿紀伊國屋本店で開催されるパブリックビューイングに行くので、ハン・ガンの名前が発表される瞬間を、書店の一角に設置されたモニターで観ていました。
受賞の瞬間「韓国!」と驚きました。
と同時に、アジア人女性初をお隣の国に取られたことに残念さを感じつつ、書店員さんがハン・ガンの本を大量に平積みする様子を横目に店をでました。
韓国文学は、女性の生きづらさや怒り、心の深底に潜むマグマのようなものを描いている作品が多く、私自身もここ数年で何冊か素晴らしい作品に出会いました。
ハン・ガンは未読なので、受賞を機にちゃんと読みたいなと思い課題本にしました。他の参加者も、初ハン・ガンだったため、同じスタートラインでの読書会でした。
以下感想抜粋です。
全体の感想:
・1回目読んだ時はよく分からなかった。特に彼女の章の彼女とは誰なのか?著者を投影した登場人物なのかなと思っていたけど、最後の平野氏の解説を読んでなるほどと思い、読み返した。2回目は理解が深まり、著者の感性の鋭さをより感じた。
・昨日読み終わった。
彼女の章がよくわからなかった。
俯瞰して見てるのかなと思ったが、解説をみてなるほどとなった。終始、詩を読んでいる感じだった。
・難しいが読後に余韻が残る。
生きている人、死んでいる人、存在している人、いない人が混在している感じ。
愛犬を亡くしたくだりが共感できた。
自分も愛犬をなくした後に、愛犬に似たぬいぐるみを持って旅をしていた。生きてたら・・・と思いながら旅をしていた。
・SNSで感想をみて読みたくなった。
心が静かになる作品。表現が独特。
・読みづらいから声に出して読んだ。韻を踏んでいてリズムがある。
金子みすずの『積もった雪』や若山牧水の『白鳥は』を思い出した。白さと悲しさがある作品。
・昨日読んだ。
あらためて自分を生きるような「再生」を感じた。人間は生き物を殺して生きている=死があるから自分がある。昔の人が命をかけてくれたから今がある。死の上にある生。
川上未映子の『乳と卵』を思い出した。白は色を足していくと黒になる。死ぬ時は白に戻るのがいいなと思った。
・リズムがいい。解説を読まないと理解できないのが辛い。自分は著者の立場だったら姉にそこまで思い入れがあるか?そこまで寄り添えるか?子供がいるいないのは関係なく、共感できる部分、できない部分がある。お姉さんへの解像度は自分はそこまで高くない。訳者がすごい。この言葉をよく翻訳したなと思う。これはAIにはできない。
気になった箇所:
・韓国の子供の数が平均何人なのかかわらない。2人亡くしているのは普通なのか?
・母親から死んだ姉兄のことを聞いて、背負わされている、責められていると感じたのでは?
・親からしたら子供は何人いようと子供だから、自分の子供たちとして語ったのでは?
ただ、子供からしたら自分1人のこととして受け取ってしまうかも。
・子供側はあなたが生きていて良かったとはならない。
・小説版には随時にイタリック体表記があるが、ハードカバー版にはない。何故か?
また、小説版のイタリック体も何を意味しているのか不明。
・白に関して、雪の降らない国は白いものとは何を指すか?喪服、塩、砂糖、ココナッツ?
好きな章:
・角砂糖
・白く笑う
・翼
・白い鳥たち
・ドア
・みぞれ
・吹雪
・白服
・米と飯
食べ物=これから生きるため
前向きなもの章のさいごに持ってきている
・作家の言葉
この作品は著者に子供ができた後の作品。自分も流産するのでは?その恐怖を乗り越えてからこの本を書いた。とても前向きな作品。
今を生きている感じ。現在を生きている。
好きな箇所:
P93 ハンカチ
最後にハンカチが一枚、とてもゆっくりと落下していった。翼を半分たたんだ鳥のように。落下地点をおずおずと見定めている魂のように。
P87 息
冷気が肺腑の闇の中に吸い込まれ、体温でぬくめられ、白い息となって吐き出される。私たちの生命が確かな形をとって、ほの白く虚空に広がっていくという奇跡。
P134 静けさに
まだ私は充分に洗われていないから。
P111 白い石
沈黙をきゅっと固めて凝縮させることができたなら、こんな手ざわりだろうと思えた。
P143 米と飯
炊きたての飯を盛った器から白い湯気が上がり、その前に祈るように座るとき、その瞬間に感じるある感情を彼女は否認しない。それを否認することは不可能だ。
P81 塩
あれをしたいなら、一つも傷のない足を持っていなくては。
以上です。
今回は作品自体が小説というよりも散文のような感じだったので、どのように進めるか悩んでいたのですが、参加者の皆さんからたくさんの意見が出てため、結局あっというまに終わってしまいました。
会議室の予約時間が過ぎてしまい、内線鳴らされたりとバタバタしてしまい、最後本の集合写真を撮り忘れてしまいました。久しぶりの失態です。
また気になる作品があれば、課題本読書会を開催します。
ご参加の皆様ありがとうございました。
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