8/17(日)に開催した、課題本読書会の終了レポートです。
課題本:『真夏の死』 三島 由紀夫 (著) 新潮文庫
時間:10:15~12:30
開催場所:池袋のカフェ
人数:8名
今年は三島由紀夫生誕100年ということで、年初から三島由紀夫で課題本読書会をやろうかと考えておりました。さてどの本にしようかなと考えながら本屋を物色していたところ、『真夏の死』の表題と、帯の文字が目に入り(写真は下に添付)
「喪失の底で、なぜ私は狂わないのだろう」
見た瞬間に、真夏にこの本で課題本をやろうと思いました。
読書会は8名の方にお集まりいただき、『真夏の死』は全員課題本になったから手に取ったとのこと。
まずは1人ずつ全体の感想を発表し、話し合いたい短編を投票で決めました。
≪三島由紀夫 略歴≫
1925年(大正14年)
東京の四谷区(現在の新宿区四谷)に生まれる。本名は平岡公威(ひらおか きみたけ)
1926年(昭和元年)元号が昭和へ
1939年(昭和14年)9月1日 第二次世界大戦 開戦
1945年(昭和20年)8月15日 第二次世界大戦 終戦
1947年(昭和22年)
22歳 東京帝国大学法学部を卒業
1949年(昭和24年)
24歳 「仮面の告白」出版。高い評価を得て、作家としての地位を確立
1954年(昭和29年)
29歳 「潮騒」を発表し、新潮社文学賞を受賞
1957年(昭和32年)
32歳 代表作となる「金閣寺」を発表し、読売文学賞を受賞
1968年(昭和43年)
43歳 独自の組織「楯の会」を結成
1970年
45歳 「豊饒の海」の最終原稿を仕上げる
自衛隊市ヶ谷駐屯地(現・防衛省本省)にて決起
東部方面総監を人質に演説、後に割腹自殺
≪全体の感想≫
・三島由紀夫はあまり読んだことはない。今まで呼ばれなかった。国粋主義者や割腹自殺から野蛮なイメージがあったが、読んでみると繊細な文章で驚いた。
・三島由紀夫もだが純文学自体あまり読んだことない。純文学はよく分からないというイメージがある。今回の課題本はオチがあって良かった。入りやすかった。登場人物にクセのある人が多い。時代が違っても同じ人間なんだと共感を覚えた。繊細な文章。
・純文学は文章が難しいイメージ。『真夏の死』は短編で読みやすかった。芝居じみていたり、ポーンと突き放されたような終わり方をしたり、ストーリー自体を楽しめた。
・純文学や三島由紀夫には触れてこなかった。全体的に一歩引いてみている感じ。俯瞰してみている。まるで芝居を上からみているような感じ。分かりにくい部分もあり、読み解くのに時間がかかる。
・純文学はあまり読まない。全体的に読みづらく、他の短編は分からなかったが、『真夏の死』は一番すっと入ってきた。自分の身近な人が亡くなったらこういう感じになるのかな?三島由紀夫はとっつきにくいと思っていたが、これを機に長編も読んでみたい。
≪投票結果≫
煙草 1票
春子 2票
サーカス 1票
翼 1票
離宮の松 3票★
クロスワード・パズル 4票★
真夏の死 4票★
花火 2票
貴顕 0票
葡萄パン 0票
雨の中の噴水 3票★
≪上位4作品感想≫
離宮の松 3票★ 昭和26年12月
・アメリカ兵との会話が面白いし、美代の行動力が良い。
・ラストがスカッとした
・知っている場所が出てきたので親近感。
クロスワード・パズル 4票★ 昭和27年1月
・全体的におしゃれ。お芝居みたいに情景が作りこまれている。
・まるでミステリー小説みたいで、あまり三島由紀夫ぽくないなと思った。
真夏の死 4票★ 昭和27年10月
・大事なもとを失った。狂いたいのに狂えない。気持ちが薄くなっていることへの恐怖に共感した。一定の距離感を置いて読みたい。
・朝子の悲劇のヒロインとしての自分、自分に酔っている、エキセントリックな芝居じみた、まるで演技のようなふるまいと感情。これは人間誰しも持っているんだろうか。
・悲しみ方は男女で違う。執着したし、女性のがひきずりやすいのかも。
・一見立ち直ったようにみえても、ふとした時に恐ろしいこをと考えてしまう。
・ラストのシーン、朝子は何を待っていたのか?
雨の中の噴水 3票★ 昭和38年8月
・最後そうくるか!と思った。
・最初から最後まで男性目線。女性は何を考えていたのか?
聞いてなかったことにして、このまましらばっくれる予定?彼女の方が一枚上手。
・全体的な雰囲気が近代的。
・噴水→雨→水の描写。雨は自然、噴水と涙は人間がコントロール。
・男性はなぜつきあったのか?理由が中二病。
≪気に入った箇所≫
P180
安枝は日光を怖れていた。自分の肩を見、水着の上にあらわれている胸を見た。その白さに故郷の雪を思い出した。胸の上辺をそっと爪先でつまんで見て、そのあたたかさに頬笑んだ。爪がいくらか伸びていて、黒い砂を挟んでいるのに気づいた安枝は、今日かえったら爪を切らなければならないと思った。
P179
夏はたけなわである。激しい大陽光線にはほとんど憤怒があった。
P207
あの事件には何かまやかしものの感じがある。ひどく疑わしいところがある。それまで送って来た一家の安泰な生活への胃液のようなものがある。あらゆる幸福に対する悪意のようなものがある。
P316
それにしても踊りは、人間の中から何かの手が取り出す不連続な記号だ。
P88
団長は二人をこよなく心に愛していた。しかし新参者としてあたえらるべき形艦を
めるめさせることはなかった。その折檻がはげしければはげしいほど彼等の生き方には、サーカスの人らしい危機と印暮しと自暴自棄の見事な繋がそなわるであろうと思われた。
P117
―それが出世の無言の妨げになっているとも知らない杉男に、誰か翼を脱ぐすべを教えてやる者はないのか?
P8
おもうに少年期には他のどこにも求めがたい確かなものが在って、彼はそれに名を与えたいと悩んでいる。それが成長だ。彼はようよう名を上えた。成功が彼を安心させ、誇り高くさせる。が、名の与えられた時、那にその確かなあるものは、名の与えられていない時と別なものに変ってしまう。
以上です。
ご参加いただいた皆様、お疲れ様でした。
今後の課題本読書会ですが、下記を予定しています。
『テヘランでロリータを読む』10月予定
『ジェーン・エア』12月予定
以前ベトナムてで買った三島由紀夫の本『MẶTTROIVÀ THEAP』を持って行きました。完全にジャケ買いですw 翻訳すると太陽と鉄鋼みたいです。調べたところ、日本ではあまり有名ではないようですね。。。
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