5/18(日)に開催した、課題本読書会の終了レポートです。
課題本:「バリ山行」 松永K三蔵 著
開催日:2025年5月18日(日)
時間:10:15~12:30
開催場所:池袋のカフェ
人数:8名
この本を手にしたきっかけですが、✕(旧Twitter)に「面白かった」的なタイムラインが流れてきて興味を持っていました。当時はタイトルからバリ島の山へ行って修行する話かと勝手に勘違いしていました。
(山行をという言葉を知らなかったため、山で修行する的な意味かと思っておりました.
たまたま図書館ですぐ借りることができたので読んでみたところ、バリ山行とはバリエーション山行の略であり、山行とは「山の中を通って行くこと」で、しかも兵庫県の六甲山が舞台でバリ島とは全然関係ないと気が付きました。
あまりの驚きとともに読み進めると、めちゃくちゃ面白い小説でした。
芥川賞作品ながら難解さはなく、主人公である波田さんの会社(傾いている)の状況と、同僚の妻鹿さんとの関係、バリ山行にハマっていく様子など、山の描写もリアルで、登山未経験者の私でも楽しめる内容でした。
波多さんが勤める新田テック建装の組織図を分かる範囲で作成したので、読書会当日はプリントアウトして持っていきました。
注)図書館に返した後に本はちゃんと買いました
全体の感想(抜粋):
・1回目に読んだときは波多さんのダメさにイライラしたが、2回目は家族や会社の状況や、最後の前向きな感じに少し成長を感じた。
・妻鹿さんへ憧れる。この生き方はサラリーマンとして不利。
・「サンショウウオの四十九日」が芥川賞をとるかと思った。「バリ山行」は文体すっきりしていて、こねくり回してない。小説としてかなり面白い。
・面白い。サラリーマンの日常を描いた作品。昭和から令和へのアップデート。
・マイナスドライバーのくだりは??と思った。これを使うのはすごい。
・仕事のパートと山の中のパートのギャップが面白い。
・山に行くほど会社の状況が悪化。
・波多さんが妻鹿さん化している。
・全体的に登場人物のことをちゃんと読んでいない。まだ何か隠している部分ある。
・波多さんの奥さんが冷たい。肺炎の際の行動など。
・夢枕 獏 (著)の『神々の山嶺』を思い出した。自分の近しい人や自分の生活に置き換えて読んだ。
・山に行きたくなった。
・波多派か妻鹿派でいえば妻鹿派。道なき道を行くところが良い。ただ、どっちが正解、どっちが間違えとかない。どっちにも感情移入しやすい。
・突っ込みところが多い。最近6~7冊ほど山系のノンフィクションを読んだ。これはダメな山登りではないか?
ここに出てくる山登りはありえない。そもそもルートと違うところを歩くことはNG。
・松浦さんの言っていることは正しいが、マウントを取っている。
・妻鹿さんのかっこうは理にかなっている。マイナスドライバーなど身近なものを活用している。職人の発想。
・バリ山行はスノボでコース以外のところを滑る人と同じ。遭難の危険がある。山の管理をしている人にも迷惑。
・妻鹿さんはコミュ障。同じ職人となら話せる。
Q波多さんが勤める新田テック建装について
・このご時世に1社に頼るとかありえない
・潰れる会社の典型(二代目社長、レクサス、新興宗教、経費で寿司、出向etc.)
・キーワードからからこの会社のヤバさが分かる(著者の思惑通り?)
Q何故波多さんは、経営方針を聞いても辞めなかったのか?
・経営視点を持ってるか否かで決まる。持っていないと「ヤバイヤバイ」と言いながら転職せず会社に留まる。
・自分に自信がないから、妻鹿さんのように「仕事」をしていない
・休み明けに数名営業が辞めていた、辞めた方が賢いのでは?残って良かったのか?
Q何故山に登るのか?
・妻鹿さんはランナーズハイ気味。山や自然が好きというより、他にバリ山行に代わるものができるのでは?
・Megadeath=恍惚感、狂う、枠からはみ出すなどからきているのでは?
・波多さんは山に行くことでオンオフの切り替えができた。雑念が入らず自由になれた。
・妻鹿さんがは、誰もいないところにいきたい。自分だけのものにしている。こういうところも職人気質。
・SNSは、楽しい=投稿するのではなく、イイネをもらいたい→楽しい投稿をするというより、イイネをもうらのが目的になっている部分がある。
→妻鹿さんは自分のアカウントを消した。見られていたから。本当に自分自身の記録のためにルートを投稿していただけなのでは。
Q妻鹿さんは波多さんを何故バリ山行へ連れて行ったのか?
・自分のことを認めてくれたと思ったのでは。
・仲間ができた感じ。
Q妻鹿さんは何故波多さんを藪漕ぎへ連れていったのか?
・妻鹿さんのサービス精神。本当のバリ山行を見せたかった。
・コミュ障だから波多さんが嫌がっているのに気が付かなかった。
Q本物の危険とは?
・妻鹿さんの危機→生きるか死ぬか。そもそも会社がどうなっても命はある。妻鹿さんは「仕事」がしたい。
・波多さんの危機=生活(会社・仕事・家庭)がどうなるか?いまの生活をキープできるか。波多さんは「仕事」に自信がない。
・波多さんは山にハマり過ぎている。何かから逃げているから?手軽な山に逃げている。
・波多さんは自分が見えるものしか見ていない。妻鹿さんへ攻撃したい。妻鹿さんへの嫉妬から言ってしまった。
→波多さんと妻鹿さんはそもそもすれ違っている
最後の展開:
・妻鹿さんは見つけて欲しいのか?
・波多さんが妻鹿さんに同化していっている。成長している。
・波多さん、夫婦関係や会社のことは大丈夫なのか?流されるまま生きている。
気になった箇所:
P22「バリやっとんや、あいつ」
P37「.....でもね、ホントは山に道なんかないんですよ。昔の人はそうやってルートファインディング、もちろんそんな言葉もなかったけど、山に入って沢沿いとか尾根伝いに、歩けそらな昼を探して歩いたんだよね。だからある意味でバリエーションっていうのが一番本来の山登りに近いのかもね。登山っていうのはちゃんと整備された道を、ある意味で僕らは歩かされているんですよ。僕の昔の仲間にもね、そういうのが好きなのがいますよ。まあ確かに危ないし、マナー違反だ、自然を荒らすなって、松浦さんみたいに言う人もいるけどね」
P149私はひとりで登りたかった。そしてどこまで進めるかわからないが、私は自分で地図に引いたルート、バリに分け入ってみたかった。急斜面や断崖は避け、無理はせず、進んでは引き返して径を探し、それでいくらも進めないかも知れないが、迷いながら行けるところまで行こう。ひとりだからこそ気兼ねなく迷うことができる。そうすれば妻鹿さんの言うバリがわかるだろうか。そしてその先に、私は妻鹿さんの姿を見るのかも知れない。
P154「思考と呼べるほど確かなものでなく、感覚に近い、もっと漠とした何か。その中に深く潜っていたような感じー」
P28妻鹿さんは自分の装備についてひとつひとつ丁寧に解説してくれる。「ホムセンにある道具もさ、けっこう山で使えるんだよね。安いし」
表紙 カバーの山のルートと本のマスキングテープの絵
以上です。
今年は夏と秋に課題本読書会を予定しております。
また日程が決定しましたらお知らせします。
0コメント